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JTF 翻訳祭企画実行委員長
古谷 祐一Furuya Yuichi
昨年の11月29日、アルカディア市ヶ谷にて第26回JTF翻訳祭が開催されました。各セッションのレポートはこの特集でご覧いただくとして、このたびは、第26回翻訳祭企画実行委員会のメンバー結成の経緯がとてもユニークでしたので、この場を借りてお伝えしたいと思います。
私は4年連続で翻訳祭企画実行委員として運営に携わってきましたが、私の経験から申し上げますと、従来の翻訳祭は、JTF理事の中から実行委員長が選ばれたのち、実行委員長主導のもと企画実行委員会が結成されます。翻訳祭でもっとも重要な「コンセプト」は、企画実行委員会が結成されてから、度重なる打ち合わせの中で議論され、決まっていくのが従来の流れでした。
一方、昨年の翻訳祭のコンセプトは、赤坂のタリーズコーヒーで翻訳者の立場でJTF常務理事を長く務められた井口耕二氏と私の会話の中から生まれました。
翻訳祭自体の入場者数は毎年前年を上回り、事実上、翻訳業界最大のイベントに成長しております。これは非常に喜ばしいことですが、一方でここ数年の翻訳祭における個人翻訳者の参加が減少しているという事実も否定できない状況でした。翻訳の原点である「翻訳者」の減少に危機感を抱き、井口氏との会話の中で、このタイミングで翻訳者の視点で業界全体のバランスを配慮した翻訳祭を実施する必要があるだろうという結論に達し、その場でコンセプトが決まりました。この時点で企画実行委員会のメンバーは2名でしたが、役者が揃うのに時間はかかりませんでした。このように少しドラマチックな展開で企画実行委員会のメンバーが結成されたのです。
結果として、個人翻訳者の参加は前年の2倍以上となり、全体の入場者数も過去最高を記録しましたが、私はこの結果を自然の流れだと受け止めています。まず、翻訳祭に初参加の方が多かったことが印象的でした。翻訳業界はまだまだこれからだと言うことです。一方で、「講演・パネルディスカッション」の事前の申込みが例年を大幅に越えていたことから、当日の参加申込みを見合わせるなどの措置を講じたにもかかわらず、会場に入りきれないほど人が溢れた「講演・パネルディスカッション」が多くあり、ご満足いただけなかった方も多くいらっしゃったかと存じます。この場を借りて深くお詫び申し上げるとともに、現企画実行委員会メンバーの最後のミッションとして、次回以降の翻訳祭の課題・反省点をまとめ、次に繋げていく所存です。最後になりますが、翻訳祭を陰で支えてくださった約70名のボランディアスタッフの皆様、事務局にもこの場を借りて感謝申し上げます。
古谷 祐一Furuya Yuichi
JTF 翻訳祭企画実行委員長
2007年3月、東証1部上場企業のGMOインターネットのグループ企業であるGMOスピード翻訳株式会社の常務取締役社長に就任。現在は代表取締役社長。2012年6月、日本翻訳連盟の理事に就任。見積りから翻訳者のアサイン、納品まですべてのプロセスを自動化することで、低コスト・短納期化を実現した「オンライン翻訳サービス」を手掛ける。新たな翻訳需要の開拓に向け、国内主要の大手ポータルサイトとの提携を実現させる。また、国際規格であるISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得。機密性の高い翻訳案件でも安心してオーダーができる体制を確立。GMOスピード翻訳としての雑誌・メディア取材実績としては「通訳・翻訳ジャーナル2011年夏版」(イカロス出版)や「翻訳辞典2012年」(アルク)などがある。