日本翻訳連盟(JTF)

私の一冊『ワンダードッグ 人に寄り添う犬たち』

第58回:英日翻訳者 池田 彩さん

『ワンダードッグ 人に寄り添う犬たち』モーリーン・マウラー、ジェナ・ベントン著、特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ監訳、齋藤めぐみ訳、緑書房、2024年

病院で患者を支える“ファシリティドッグ”。2010年から静岡県立こども病院で活躍し、多くの人に勇気と安らぎを届けたベイリーの姿を覚えていらっしゃる方もおられるでしょう。私は小学生の頃に「犬に関わる仕事がしたい」と思っていましたが、成長とともに別の道を歩みました。最近になって再び働く犬の世界に惹かれ、セミナー参加や書籍で情報収集をしていたところ、本書に出会いました。

『ワンダードッグ 人に寄り添う犬たち』は、ベイリーを訓練し日本へ送り出した米国NPO「アシスタンス・ドッグス・オブ・ハワイ」創設者モーリーン・マウラー氏の著書です。公認会計士としての安定したキャリアを手放し、40代でNPOを立ち上げた氏が育成した数々のアシスタンスドッグの活躍と、日本語版オリジナルとして綴られるベイリーとの思い出が温かく心に残ります。なかでも、生命維持装置を外された少女がファシリティドッグ候補の子犬に触れて奇跡的に回復したエピソードには胸を打たれました。

ベイリーをきっかけに、日本でも病院だけでなく裁判所などでファシリティドッグの導入が進んでいる今、本書は“犬の癒しの力”を改めて感じさせてくれる一冊です。

◎執筆者プロフィール
林 慶子
英日翻訳者
商社勤務と社内翻訳を経て、2013年よりフリーランス翻訳者。法律、IT分野の尼日翻訳からスタートし、現在はおもに医療関連の英日翻訳を手掛ける。
https://note.com/rabbits_wh

★次回は英日翻訳者の池田彩さんに「私の一冊」を紹介していただきます。

←私の一冊『The Culture Map』

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