日本翻訳連盟(JTF)

私の一冊:『翻訳教室 はじめの一歩』

第77回:韓国語講師・韓日翻訳者 高上由賀さん

『翻訳教室 はじめの一歩』鴻巣友季子著、ちくま文庫、2021年

翻訳本は苦手だった。カタカナの長い人名や、どこかいつもと違う日本語に違和感を覚えていた。そんな私がひょんなことから翻訳講座の門を叩くことになり、受講したての頃に先生が授業で紹介してくださったのがこの本だ。

本書は、著者が母校の小学校で行った翻訳授業(NHK「ようこそ先輩」)をもとに構成された一冊で、英語に馴染みのない子どもたちが名作絵本『The Missing Piece』の翻訳に挑戦しながら「翻訳とは何か」を学ぶ過程が綴られている。

翻訳のほの字も知らなかった私にとって、本書が格好の入門書となったのは言うまでもなく、踏み出しかけた片足を宙に浮かせたまま迷っていた私を一気に引き込んでくれた。「翻訳をする時にたいせつなこと――それはずばり言うと、想像力の枠からでようとすること」、「訳者というのはまず読者――よく読めればよく訳せる」など、長年翻訳に携わってきた著者の言葉は、読むたびに気付きをくれ、心構えを新たにしてくれる。今回再読して目に留まったのは、「違和感があるのは興味がある証拠」。また新たな気づきがあった。

◎執筆者プロフィール
髙上由賀(たかじょう ゆか)
韓国語講師・韓日翻訳者。共訳書に『[図説]韓国 食卓の文化史』(チュ・ヨンハ著/原書房)、『韓国・朝鮮の心を読む』(クオン)がある。

★次回は韓日翻訳者の中川里沙さんに「私の一冊」を紹介していただきます。

←私の一冊『アウシュヴィッツの図書係』

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