日本翻訳連盟(JTF)

私の一冊:『貸出禁止の本をすくえ!』

第73回:英日字幕・出版翻訳者 梅澤 乃奈さん

『貸出禁止の本をすくえ!』アラン・グラッツ作、ないとうふみこ訳、ぽるぷ出版、2019年

翻訳の勉強を始めてから1年が過ぎて、児童書を訳したいという気持ちがかたまったころに出会ったのが、「貸出禁止の本をすくえ!」だった。まずは原書で読んで、自分でも少し訳してみたりしながら邦訳版の発売を心待ちにした。

自分の気持ちを主張するのが苦手な主人公が、大好きな本を守るために強くなっていく姿に胸を打たれると同時に、やっぱり自分は児童書が好きでたまらないのだと実感できた。目を背けてはいけない問題を子どもにもわかりやすく伝え、子どもの近くには必ず愛と勇気に満ちた優しい大人と、頼れる友達がいる。なんて、すてきな世界なんだろう。児童書は、大人の心もあたたかくしてくれる。

本書の中で「貸出禁止」と認定された“ごくごく一般的な児童書”は、様々な(かつ理不尽な)理由で実際に小中学校などの図書館から姿を消した過去があるのだとか。同じ過ちを繰り返さないために、大人として何ができるのか考えさせられる。

◎執筆者プロフィール
梅澤 乃奈(うめざわ のな)
英日字幕・出版翻訳者。主な翻訳担当作品に『ミス・アメリカーナ』(Netflix配信)や『テイラー・スウィフトの生声』(ヘレナハント編集、文響社)がある。翻訳同人誌『LETTERS UNBOUND』や著書『月のしおり』(小声文庫)も刊行中。

★次回は韓日字幕翻訳者の徳田晴子さんに「私の一冊」を紹介していただきます。

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